空気望遠鏡と呼ばれる望遠鏡があります。岩手県小岩井牧場の天文施設などにあり、実際に稼動しています。本来収差の多い単レンズのF値をどんどん長くして、色収差の補正効果を生かしました。鏡筒が4mとか5mとか伸びていって、やがて重量から邪魔になった筒を外してしまいました。
むき出しになった望遠鏡を空気望遠鏡と呼びました。性能向上の目的ですから正常進化型の発展でした。
ピンホールの望遠レンズが一般の望遠レンズに比べて優れている点は・・・
まずないでしょう。
F値は製作したもので360です。使用にあたってはピンホールレンズの不利な点までも、望遠鏡のように拡大してくれますから。
たとえば月の撮影をするとき、500mmの写真レンズで数秒あれば明るいファインダーをのぞいて撮影が終了します。望遠ピンホールでは、ほぼ真っ暗のファインダーに月を捉えるのに一苦労、さらに適正露出を得るのに長時間を必要とします。その間、月は移動するので赤道儀で追尾します。なんとスローライフな撮影スタイルでしょうか。
ある中学生がPA40mm(広角ピンホール)で私を撮してくれました。その時真っ暗なファインダーにビックリしていましたが、
「光りを遮ってじっと見続けると、見えないものが見えてくるんだよ。」
と、声をかけたらその通りになって、さらにさらに感嘆の声をあげてくれました。
日食の観測機材の製作から始まった、ピンホールレンズの実験でしたが、そろそろ完結です。皆既日食(1999年トルコ)を観測したとき、深黒の太陽をみて、この世に「光」というものを「当たり前のように」提供してくれているものが何だったのか、そもそも光りとは何なのか、宇宙に自分がいて、「光」を受けている「本当の」意味は何だろうとふと感じました。
ピンホールレンズで撮影するとき、ワンショット・ワンショット、光りの状態を常に意識しカメラと自分に相談します。これから愛用のレンズに加えて、こぼれる光りの中にある風景を、宇宙から少しずつ切り取らせてもらいましょう。
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