大瀧雅寛

東京体育館と新国立競技場

2014年6月11日 | 大瀧雅寛 | Comment0

群馬県立近代美術館1988.09.19

20年以上も前から私の事務所の机の上に、この古いスケッチを入れた額が掛けられています。スケッチにある建物は、東京千駄ヶ谷の「東京体育館」です。この建物を設計した建築家、槇文彦(まきふみひこ)先生に頂いたもの、私の宝物です。話題の「新国立競技場」が、この東京体育館の隣りに建つことになっているのです。


時は今から26年前、1988年9月に工事中の「東京体育館」を見学に行った際、千駄ヶ谷駅前のレストランで、ランチがくるのを待っていると、私の前のテーブルに、白髪の男性がひとりで腰をおろしました。槇先生でした。サインを頂きたいとお願いしたのです。

スケッチの左側がメインアリーナ、小さく階段上の屋根がサブアリーナ、ピラミッド上の屋根がエントランス。右端に屋内プール。これほどの建物も、このようなスケッチからスタートしたのだと思うと、大きく感動しました。


高さは極力抑えられて、大きいわりには極力スケールを抑えた建物になっています。まわりの環境を大切にしたからです。「デザイン」されているのです。「デザイン」とは、美しいものを造るだけでなく、様々な問題を解決していくことなのです。

東京体育館

東京体育館 | 東京体育館 - Wikipedia | 槇文彦 - Wikipedia

この東京体育館に隣接する旧国立競技場が、「新国立競技場」として建て替えられることの賛否が、話題になっているのです。

新国立競技場 | 国際デザインコンクール | 旧国立競技場

新国立競技場

新国立競技場案の設計者を国際コンペで選定することになりました。最優秀賞として発表された新国立競技場案のパースが公表された時、私の第一印象はデザインの好き嫌いよりも、スケールの巨大さでした。

私も建物を設計する際には、パースを描いたり模型を製作します。パースや模型は設計図よりも、建物を理解しやすくなりますが、注意しなければならないのは、「建物を俯瞰しない」ということです。

建物を鳥のように空から見下ろすことは実際にはなく、地面から1mから2mほどの場所から見上げ、その建物を理解するのです。

この建物も「周囲の歩道を歩いているとき、どんなふうに見えるのか」ということが、大変気になりました。


この槇先生が、「新国立競技場」について、JIA MAGAZINE 295号に「新国立競技場案を神宮外苑の歴史的文脈の中で考える」を投稿し、問題提起したのです。

新国立競技場案を神宮外苑の歴史的文脈の中で考える(P.10から)

槇文彦「新国立競技場案を神宮外苑の歴史的文脈の中で考える」シンポジウム レポート


マンガ建築考の森山高至さんのブログ、「建築エコノミスト 森山のブログ」で、くわしく説明されています。今後の進展が気になります。

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